最近は、ステーキを家で焼く。彼女はお肉が大好きなのに、このごろ食べさせてあげれてないから、せめてもの償い。
三筋やサーロイン、リブロース。彼女はめんどくさがり屋なので、サイコロステーキにして提供する。
久しぶりのステーキに舌鼓を打つ彼女の姿が、愛おしかった。そしてボソッと、「幸せ」って言ってた。
「美味しい」と連呼してくれたので、こちらも作った甲斐がある。俺も嬉しくなる。
コロナがどうとか、ありきたりな話題はしたくなかった。
最近はどうも、コロナ禍に苦しまされている。勤めていた会社が倒産して、給料未払いになって、金欠になって、彼女と困窮している。
『新しい生活様式』、最近よく聞くようになったな。
2人の生活も、ある意味、新しい段階へ移ってる。
「愛してる」と言ってくれなくなったり、夜の営みも拒否するようになった。前までなら、俺が逆の事をしたら、泣いて怒っていたくらいなのに。
「こんな生活、嫌だよ」
何回、聞かされた事か。
俺はこんな新型ウイルスの災難に負けたくないし、2人の愛はそんなもんじゃないと確信してる。
過去を捨てて、前に進みたい。
今日、荷物の整理をした。彼女と出逢う前に買っていた衣類を捨てた。
今残っている数々の物は、彼女との思い出がある。
幸せが詰まってるんだよ。デート行ったら、しょっちゅう買い物に出掛けてたんだから。
楽しかったなぁ。
あの頃みたいに、また笑い合いたいよ。