愛おしいさが、独占欲や支配欲みたいなものに変わって、それはすなわち執着で、俺のものであってほしくて、今までの男の事なんて忘れて、この俺がNo. 1になりたかった。
全ての思い出を上書きして、あるいは白紙に戻して、俺の記憶でいっぱいになってほしい。
きっと、俺は、ロマンチストに憧れてる。具体的な人物がいるわけじゃない。けど、幼い頃から「ロマンチックな名前だね」と言われる事が多かった。
本名が、そういう名前なんだ。ブログに書けないから説明が難しいけど、ホストにいそうな名前とは言われる。
でも、他者の評価と自己評価との相違を感じてきたのは事実で、「俺はそんな人間じゃない」と、自己否定や自己嫌悪に苛まれる事が多々あった。
お洒落な物事が好きで、喫茶店での朝ご飯なんて、素敵だなって思う。
今日は彼女が引っ越しの準備をしていたから、デートは昼からだったけど、朝飯なんて食べない。彼女がいないと、俺に食欲は無い。
今までは、ただ栄養を補給する為に食してるだけで、食事の喜びを味わってきたわけじゃない。そんな退屈な日常とも、もうすぐおさらばだ。
彼女がいたことで、俺の人生は大きく変わった。
きっと俺は、ロマンチストになれる。
会社からの評価で、商品券を貰っていた。最近金欠だったので助かる。
いつもそうだ。お金に困る事があると、事故に遭って、慰謝料が入ってくる。今年で言えば、おばあちゃんの通夜・葬式代か。
語弊の無いように言うと、俺は当たり屋じゃない。ただ、2年に1回、事故に遭うというジンクスがあるだけだ。
結構な頻度で金に困ってる、自分の人生に笑ってしまうけど。
それはさておき、その商品券を使って、彼女の好きな牛タンを奢る。でも、残り1人前だったので、彼女は別の物を頼むと言った。
それはそれで良かった。「色んなおかずの付いている定食が好き」と言っていたので。
俺の牛タンの殆どを分けてあげる事で、彼女を喜ばせる事が出来たと思う。好きな物が、たらふく食べれただろう。
後は、ゲーセンに行って梅干しを3つゲットしたり、可愛いワンピースを買ってあげたりした。
最後に、GUCCIの財布を買いに行く。
今、彼女が使っているGUCCIの財布は、元旦那からのプレゼント。気に食わない。思い出すような物を、手にしてほしくなかった。
だから俺が、新しい物を贈る。
彼女は言った。
「誕生日プレゼントとして、受け取っておくね」
メッセージカードや、ラブレターを渡したんだが、それは誕生日プレゼントにならないのか…。
俺がロマンチストになる道は、まだまだ程遠い。