俺の目の前でセクハラした先輩がいた。お尻を触ってた。初デートの前日。今でもその光景を鮮明に覚えている。
店長に相談しろ、と言った。店長はなぜか笑って流した。多分、大ごとにしたくなくて、揉み消そうとしたんだ。この店は過去に何度か問題を起こしているから、上に言いたくないのが本音だろう。
俺は後悔した。なぜ自分が行動を起こさず、上司に任せてしまったのか。
2回目。俺も店長もいない時だった。同じことされて、「やめてください」と言ったら、「この程度はスキンシップなんだよ」と返されたらしい。
それをLINEで聞いて、ぶん殴ってやりたい思いだった。
3回目。また、俺の目の前で。さすがにキレて、「やって良い事と悪い事があるでしょ」と叱ったら、目も合わさずに「わかった、わかった」と言いながら通り過ぎようとした。それに怒り心頭で大声を出したら、また目も合わさずに「わかったから」
すぐ店長に報告しに行った。
「お前がそこまでキレたんなら、もう大丈夫だよ」
大丈夫な訳あるかボケ。そう言いたかったけど、さすがに上司と口論にはなれない。
店長は彼女に、「お前もお前だ。そういうことされやすい人間だから」と言うんだ。だからといって、セクハラしていい理由にはなんねえだろ。
上司に言っても、本当に無駄な事はわかった。俺の力でどうにかするしかない。
仕事に戻ったら、肩を叩いて「ごめんね〜」と笑いながら言ってくるから、反省してない事は察した。ヘラヘラしてんじゃねえよ、と内心思った。
「俺じゃなくて向こうに謝れや。お前が悪いんだろうが。てめえ何やったか、わかってんのか?」
「わかった、わかったから」
同じ言葉を繰り返すこいつに、もう心底腹が立って、顔も見たくないとさえ思った。悪びれる様子がない。
確かにそのあと謝りに行ったみたいだが、俺に言われないと謝れないような先輩って、どうなんだ。男として最低な事してんだぞ。
本心は、殴りたい。3回もセクハラを繰り返す奴を放置する、店長にも問題がある。クビにしろや。
だが、言っても無駄だ。俺が変える。この現状をほったらかしにしたくない。