帰りの駅。周りは寒がってるのに汗水垂らし、疲れて猫背になり、俯いている俺。先頭の、一番前の席に腰掛ける。電車に揺られるくたびれた俺は、考えていた。
電車が45分遅延して、家に着いたのがいつもより1時間遅くなった。とても迷惑な出来事。苦情を吐きたくなるが、言ったところで変わらない。自分も迷惑かけながら生きているんだから、他人からの迷惑も許すべきなんだ。
「生きているだけで迷惑な存在なんだ。死んだ方がマシだ」
小学生の頃はよく言った。なのにしぶとく10年、無駄に生きてきた。24歳になった事を、ふとした時に思い出す。濁流みたいな社会に溺れながらもがいてる。彷徨ってる。
よく生きてきた。「今日こそ死のう」と思いながらここまで来た。自殺しようとは、もう思わない。愛する妻がいて、幸せを味わってる。彼女は俺にとって薬なんだ。
朝早くに家を出る。帰りは遅い。心が乱れる。禁断症状。中毒になってる。麻薬みたいなものだ。
ずっと離れたくない。本当は仕事もせずに隣に居たい。でもそんな生活は長く続かない。働くしかない。一緒にいたいからこそ、俺は心を痛めて仕事をする。
家に帰ると、妻がステーキ肉を買っていた。焼いてあげた。美味しそうに頬張っていた。
良かった。頑張った。疲れた。