「子どもたちには、「愛、勇気」をもってほしい。いまの時代ではこうしたことをまともにいうと恥ずかしいという風潮があります。しかし、「愛、勇気、冒険」といったことはとても大事なことです。その中でたすけあおうという気持ちが出てくるからです。」（『ボクと、正義と、アンパンマン』P27） pic.twitter.com/lGhAcLN0Yb
— 本ノ猪 (@honnoinosisi555) 2022年4月8日
俺は料理人をやっている。学生時代のアルバイトからずっと飲食業一筋だ。何故かというと、幼い頃に食べたい物を食べられなかった事があったり、食事を楽しめなかった事などが重なった結果だから。
もう一つ、小さい時から執着しているのが、スーパーヒーローだ。正義の味方が大好き。弱く、虐められていた俺は、強さに憧れた。悪を挫く場面に爽快感を覚えていたが、アンパンマンには何故か響かなかった。顔をちぎって他の動物に与えているのが気持ち悪かった。あと、顔が入れ替わる前と後は本当に同一人物と言えるのかどうか、思考実験が俺の脳内で始まってしまう。
もし、水で濡れた顔に精神が残ったままなら、新しい顔として動いているアンパンマンは、本当のアンパンマンとは言えないのかもしれない。そういう強い恐怖を感じてしまうから見なかった。でも、今になって作者が伝えたかった事を知ると、とても深い作品だと思える。
確かに、特撮ドラマは巨悪を叩きのめして格好良い。でも、武器を取って悪を悪で制しているなら、本当の正義ではない。だからこそあくまで、正義の体現者ではなく、「正義の味方」と呼ぶのだ。しかし、アンパンマンは自分の顔を食料として他の動物に食べさせ、飢えを凌がせている。これは、自己犠牲の精神を表す。
ヒーローとしてのアンパンマンが誕生した背景には、やなせの従軍経験がある。第二次世界大戦中はプロパガンダ製作に関わっていたこともあり、特に戦いのなかで「正義」というものがいかに信用しがたいものかを痛感した。しかし、これまでのヒーローは派手な格好をし、強い力・武器・必殺技を持ちながら「正義」を口にし、悪者や暴れる怪獣を徹底的にやっつけることが主であり、飢えや空腹に苦しむ者を救わなかった。また、戦いによって汚染や破壊された自然や建物に対しての後始末や謝罪がみられなかった。戦中・戦後における深刻な食糧事情もあり、当時からやなせは「人生で一番つらいことは食べられないこと」という考えをもっていた。50代で『アンパンマン』が大ヒットする以前のやなせは売れない作家であり、空腹を抱えながら「食べ物が向こうからやって来たらいいのに」と思っていたという。こういった事情が「困っている人に食べ物を届ける、立場や国が変わっても決して逆転しない正義のヒーロー」という着想に繋がった。アンパンマンと「正義」というテーマについて、やなせは端的に「『正義の味方』であれば、まず、食べさせること。飢えを助ける。」と述べている*1
本当に俺が求めていた正義のヒーローは、アンパンマンだったのかもしれない。
俺は、敵を倒してもらう事よりもまず、ご飯が欲しかった。そういうヒーローを求めていたし、自分もそうなりたかった。だから今は介護施設の料理人をやってる。
変身すればスーパーヒーローって訳じゃない。超能力や武器なんていらない。お腹空いている人にご飯を与えれば、それは英雄なんだ。
やっぱり、ヒーローは哲学の勉強になる。人生の道標。アンパンマンから学ぶものは多いな。特に注目すべきは、歌詞だ。
何の為に生まれて 何をして生きるのか*2
愛、勇気、冒険。その内二つは俺の人生にある。妻への愛と、挑戦を続けて茨の道を突き進む冒険。
アンパンマンが示すところの正義、お腹を空かせた人にご飯を与える。それは出来ていると思うし、これからも続けたい。でも、自己犠牲や弱者が強者に立ち向かう精神。そんな物は持ち合わせていない。俺は本当に、最弱なんだ。だからこそ英雄を求めている。
こんなんじゃ駄目だな。もっと、広大な愛と不屈の勇気があれば、俺は強くなれる。
"アンパンマンは君さ"*3と言われているんだ。嫌われ者でも、愛と勇気しか友達がいなくても、英雄になれなくとも、それを目指す姿勢は持っていたい。
という事で、実践。腹を空かせた妻と、食べ放題に行ってきました。
開店と同時に入り、閉店時間まで居座ってやりました。最後の1人になるまで食べ続けたのです。
今日一日、食事はこれだけ。昔を想うと、今は好きな物を好きなだけ食べられて、とても幸せな人生が歩めていると思います。学生時代は1人寂しくインスタント麺をすすっていましたが、現在は最愛の妻と外食。至福。この一言に尽きる。
対人恐怖症だった頃を思い返すと、結婚出来たのは勇気を出したからと言える。
BTSの楽曲、Anpanmanには、このような一説がある。
「君のヒーローになるよ」*4
俺は、妻にとってのヒーローでありたい。
