ポストに放り込まれた、宅配ピザのチラシ。食欲をそそる写真に引き込まれるけど、それを注文する金銭的な余裕はない。
昼間、賄いで自作する。ピザを一切れ、手に取る前に、「彼女にも食べさせてあげたい」と、内心。
ふとした時に、自分のブログを読み返す。去年はよく、宅配ピザを頼んでいた。
またあの頃のように、2人で笑い合いながらピザを食せる日が来るだろうか。待ち焦がれてしまう自分に、「その未来を、己で掴みに行くんだ」と叱咤する。
体をボロボロにしながらさ、それでも毎日働いてる彼女は疲れてんだろうに、家のドアを開ければ、微笑みながら「ただいま」って言うの。
そして、2人はキスをする。
毎日必ず「疲れた」って言うくせに、シングルベッドの上では、妖艶な笑顔を魅せながら、俺を抱きしめてくれる。
なんで?
どうして俺を愛してくれるの。しんどく苦しい想いをさせてしまってんのに。
俺は幸せだよ。命に嫌われたとしても、この美女が幸せに生きてくれるなら、それで良い。俺にとって、世界で1番お姫様。
想起する。彼女は言った。「別れたら幸せに暮らしていけるの?」
ああ、死んじゃう。
彼女と出逢ってから、俺は死にたいと思わなくなった。渇ききってる俺に、愛を注いでくれた。でも反対に、彼女にとってに特別な、無くてはならない存在になれてるかな。
って、弱気な事言ってちゃ男らしくねえわ。
俺が彼女に幸せと安心を齎してみせるよ。これからも。一緒になって良かったと思い続けてほしいから、結婚して、愛で溢れた家庭を築こうよ。
死ぬんじゃねえぞ。お互いにな。
明日は、カツサンドを作って持って帰ろう。カラシ抜きで。