前回の続き。
彼女が、『一夜限りの関係』というのを多々持っていた話を聞いて、それが元カレとの事とは言え、そういう行為に至れてしまう所にショックを受けた。
俺は、そういうのが心底嫌いだ。言葉が出なかった。
確かに、その過去自体は嫌悪するが、彼女のこと自体は嫌いになれなかった。愛している気持ちに変わりはなかった。そんな自分が、意味不明で複雑である。
彼女は泣きながら言った。
「理想の彼女って言ってくれてたのに、ごめんね」
彼女とは生い立ちが似ていた。片親で、親に可愛がれていなくて、学生時代はイジメられて。
彼女は「似た者同士だね」とよく言うが、そんなことなかった。
彼女は、学生時代から、そういった言動を楽しんでいた訳で、恋愛より仕事を優先していた俺とは、正反対の人生を歩んでいる。
そのギャップで胸が苦しくなって、思い込みに囚われていた自分を情けなく思う。
彼女は過去を振り返って、言った。
「あの頃は青春してたな」
なんか聞けば聞くほどツラくなるってわかってるのに、彼女の過去が知りたくて知りたくて、たまらなかった。
俺が愛していたのは偽りの姿で、本当の彼女を愛していた訳じゃない。だからこそ、知る必要があったんだ。本来の、ありのままの姿を愛したいから。
俺が嫌悪しているのは、彼女の過去に過ぎない。彼女が、これからどうするか。
現在が幸福である事に変わりはなく、これから先、未来で、どういった幸せを築くかが大事だと考えた。
俺は、本来の彼女を愛す。
決まった理想に突き進むのではなく、共に歩みながら、理想を作り上げていくのが、2人にとって幸せな生活になるであろう。
胸が苦しい。俺は、彼女の過去を電話で聞いて、文字通り反吐が出た。ずっとずっと寝れなくて、日が昇るまで彼女の事が頭から離れなかった。
そして、朝になって彼女が来た。しばらく俺は言葉が出なかった。何回か話しかけられた覚えはあるが、返事をしようにも喉を絞められている感覚になり、ただただ見つめることしかできなかった。
「私は愛に飢えていたの。だから、そういうこと、しちゃってたの。愛されたかったから…」
泣きながら彼女は話した。
いくら過去を正当化しようとしても、軽い気持ちで、そういった事をしてきた事実に変わりはない。
確かに、親から愛情を受けていない部分は同じだ。でも俺は、そういう家庭に育ったからといって、手当たり次第の女に手を出したりしていない。
共感できない。納得できない。浮気をしたいなんて、思えない。
でもなんで、別れを切り出したり出来ないんだろう。むしろ、俺が幸せにしてあげなくちゃ。そう強く思える。
苦しい。苦しいよ。