おじいちゃんは3つの事業を行う実業家だった。親は親で個人事業主だし、自分の腕で飯を食う家系。そういう家族の元で育ったからか、小学生の頃からずっと俺は「(何かの)社長になる!」って言ってたくらい、労働意欲の強い奴でした。中学生に成ったら絶対にアルバイトを始めると連呼。それは周りから言わされていた訳じゃありません。自分の意思でそう成りたいと発言しました。
本当に中1からバイトしていました。夢を叶える為の勉強も兼ねて。その様子を見た同級生から不思議がられたんです。「働くより遊んでいる方が楽しいのに」ってね。
今思えば確かに、アルバイトより青春を重視しても良かったと思います。でも、俺は学生時代に対して未練や後悔を持ちません。相対的に裕福だったんです。自己肯定感も周囲からの承認も、もちろんお金もあって満たされていたので俺は幸せでした。
文武両道とは正反対の位置で生きてきたので、働く事で自己実現を目指していたんだと今になって思います。
この時期があったので、以前より金銭に対する執着が無くなりました。もうそういうのは飽きて、師匠には「お金なんて必要最低限あれば良い」とかイキったこと言ってます。
今は何をトチ狂ったのか蕎麦職人になって、『社長になる!』が『店長になる!』になっています。
「役職が小さくなってんじゃん!」と思われそうですが・・・。
言い訳をするなら俺は肩書きを追い求めたのではなく、自分の能力を発揮して自己表現したかった。蕎麦だけじゃ食えないころ工場で働いていたけど、ものすごく苦痛だった。この職業を否定したい訳じゃないけど。
でも、蕎麦は違う。これは俺にしか打てない蕎麦だ。
小学生の頃「俺は社長になるのに相応しい人間なんだ!」って思っていたけど、今はそう思わなくなっちゃった。そこまでの人物じゃない。けど、店長の座に座るべき男なんだとは強く思っている。師匠には悪いけど、そこに居るべきは俺なんだぞって悔しくて悔しくて涙を流す事が何度もある。
でも、書いていて思うね。きっと、店長になったら次は社長を目指すと思う。おじいちゃんみたいな、経営者に。