今週のお題「おとうさん」
父親がいない
名前も顔も知らない
声すら聞いた覚えがない
身内へ訊くつもりはない
話してくる事もない
彼が自殺したのだけ知ってる
虚無を抱いて次の瞬間へ
彼はなんで幼い僕を残して死を選んだのか
僕の名前は彼が遺してくれたものだと母親が言っていた
偉大なこの名前を誇りに思っているし、感謝を伝えたい
なのに、なんでいなくなったのさ
実を言うとね
僕はアナタと同じように死を選んだ事がある
未遂に終わって本当に良かった
僕は今こうして生きていられる事に幸福を感じている
僕の好きな食べ物や音楽、癖のある笑い方も
アナタと同じだって家族に言われた
厭世観に押しつぶされちゃうような性格まで
僕を育てなかったアナタ
それでも似た者同士
家族を感じるよ
だけど僕はアナタと違って
自分で死ぬことすら出来ない人間
心が黒くても空は青いし、それだけで生きてられる
「アナタの分まで生きる」みたいな幼稚で陳腐な言葉は吐けないけどさ
頂いたこの名前通りの人生を歩んでみせるよ
『パパ』