最初で最後の、最愛。

忘れよう、朽ちよう。

また夏が来て思い出す、ハタチの思い出

お題「今日の出来事」

 

 愚かな男。そいつは19歳で、2年前の自分である。ついに来年から成人だと、俺はついに大人と呼ばれるんだ。今まで価値のない人として意味のない人生を歩んできたが、形的には階段を登ったことになるぞと。

 だから決めていた。SNSで沢山の大人達に話しかけ、来年の夏、大阪のガラの悪い街で一緒に呑もうと。今思い返せば用意周到な男である。

 実を言うと医者から飲酒と喫煙は禁じられていた。あまつさえ加工肉や旨味調味料など。血管の弱さは生まれつきだから一生口にしてはならんぞと偉そうに言われていたっけ。おいそこの白衣、俺がどこで働いていると思っているんだ。神社だぞ。見るなのタブーは日本の神話にもあるんだ。それはカリギュラ効果といって大体の人類に当てはまるし、俺もその内の一人だ。

 でも俺は社交的な人じゃない。身内とすらめったに口を利かない。人との雑談より犬へ話しかけている時の方が幸福を感じる。でも、それでも、死ぬまでに一度は「飲み会」と呼ばれるものに参加してみたかった。

 だから、成人してから毎日晩酌をしていた。アルコール度数9%で500mlの奴を3つガブ飲み。家の中なのに千鳥足になっていた事も記憶に新しい。とりあえず今のうちにお酒へ慣れておく必要があったし、その目標は超えられた。

 筋骨隆々な男と谷間を晒した女。刺青やタトゥーと呼ばれるものを入れた大人が集うイタリアン料理の店で、思う存分酒を飲んだ。愉快な時間。人と喋る事はこんなにも楽しいものかと。

 けど、決めたんだ。幸せな思い出を家へ持ち帰り、俺はもう飲み会なんて行かない。そう決断した。俺はそういう人じゃないから。彼達彼女達とのひと時は本当に楽しかったのは事実だけど、俺の居るべき世界、コンフォートゾーンはここじゃないんだ。

 2、3ヶ月かかったけど、もう禁酒できている。あれほど毎日呑んでいたのにと周りは言うが、それは夏を楽しむ為だった。青春の無い俺が、思う存分夏を楽しむ為に。

 でも、もうそれは過ぎ去って、終わったんだ。

 俺が勤めている蕎麦屋の店長、俺が呼ぶところの師匠は酒豪で、何度か飲みに誘われる。その度に断る。新年会や忘年会、打ち上げなどと呼ばれるものをやりたいなら俺が居ない所でやってくれと。師匠は怒る。

 「俺が職場の人間を飲み会へ誘う時、もし一人でも来ない奴がいるならやりたくないんだ。お前が来ないならやらない」

 親睦とはそういうことか。さすが俺と正反対の性格をしているだけのことはある。師匠は本当に社交的で明朗な男。だからこそ憧れて師匠と呼ぶし、その背中へ追い付けない事も知っている。

 でも、出来る限り近付く努力はしたい。夏祭りの度に思うよ。こんなにも儚げな花火を見ていたって、隣に女性など居ないのだから。

 また、飲み会へ行ってみても良いですか。

 

今週のお題「家で飲む」

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