言葉を伝える前から、以心伝心が行われている。
人は言葉を聞いているようで、聞いていない。
「言葉を言っている人を、見ている」のである。*1
言葉をいかにして扱うか。それは人を癒す事も出来るし、傷つける事も出来る。包丁の様に使い方を誤ってはいけない、とても危険な道具である。
今回紹介する本、『僕たちはどう伝えるか』内において、“言葉を発する前に、決着はつく”*2と記されていたのが印象的。
芸人用語、「つかみ」。「心をつかむ」という意味。ネタを披露する前から、自信ある表情や落ち着いた佇まいを見せていれば、お客さんからの興味関心を惹いていれば、ネタはウケやすい。
つまりは、プレゼンを行う前から既にプレゼンは始まっていると言っても過言ではない。
どこまで言葉を届けようとするか
政治家を思い浮かべてほしい。
彼らは記者発表のときや国会答弁のときに、よく原稿を読んでいるだろう。
そのとき、彼らは輝いているだろうか。いない。伝わらない。*3
確かに。思わず頷いてしまう一文。
記者会見の時など、政治家さんは棒読みで無表情のまま、返答を行っている事が多い。しかし、選挙の時はどうだろうか?
彼らは熱を込めて、待ち行く人達に自分の主義思想を力説している。この時、政治家は原稿を読んだりしていないんだ。自分の想いを相手へぶつけている。だからこそ、色んな人々へ刺さる言葉を発する事が出来る。
この違いを説明するなら、恐らく原稿を読んで喋っているのは、失言を恐れての事だろう。つまりは、保身の為に用意された言葉を発しているだけ。
だが、選挙時の言葉は、自分の夢や目標の為に国民を動かしたいと心から出た言葉である。
人に何かを伝えたいなら、言葉を用意するのではなく、自分の熱意をそのまま口から出すのが適切であろう。
簡単で短い言葉こそ最良
「一番使いたくなる言葉だが、使ってしまうと聞き手の心が離れそうだ」という言葉は大胆にカットする必要がある。
一番伝えたいことのために、余計なものを「省いていく」。
その精神はとても重要だ。*4
俺は飲食業に学生時代からずっといる人間なんで、少なくともこの業界にはそういう人多いなぁっていう印象を受ける。
例えば、マニュアル。飲食業の3原則とも言えるものに『クオリティ・サービス・クレンリネス』がある。正直、「何で横文字なの?」と思いながら今日まで仕事してる。
クレンリネスと似た言葉にクリンリネスがあって、意味を混同している人がいたりする。俺もいまいち違いがわからん。わかりやすく日本語で「綺麗なお店づくり」とかにすればいいのに、と内心思ってる(笑)
ルー大柴のみたく、日本語と英語を組み合わせながら喋る風潮があるように思う。でも、齟齬が生まれない為には、端的に日本語でわかりやすく伝えるべきだろう。カッコつけは自己満足。
会話とは、相手がいなければ成り立たないもの。相手が理解しやすいような言葉選びをして喋るのが鉄則。当たり前の事だけど、この基本を忘れずにいたい。
中田さんの本にも、このような一文があった。
削ぎ落とすことで、強く印象づける。
感動を演出する。*5
この本はこういう人に合うよ!
上記の通り、いかにして言葉巧みに表現するか、どう伝えるかが書かれています。『芸人』という、言葉を扱うお仕事をされている中田さんだからこそ言える事柄が詰まっています。
プレゼンのノウハウが書かれているので、もちろん業務上で活かせる手法が記されているんですが、この本の使いどころはそれだけじゃないと思います。
言葉は仕事以外にも使います。家族や恋人、友達。顔も名前も知らない人とだって、対話しながら生活していくものですよね。
そういった対人関係においても活かせる方法が、この本には詰まっていると感じました。
言葉の大切さが、この本によって学べます。