僕が求めている蕎麦つゆの話

お題「思い出の味」

 

 恋しいあのダシ。忘れもしない去年の6月3日。師匠に食べさせてもらったあの蕎麦つゆは、他所とは一味違う。カツオ風味の中にサバの味を少し強めてあって、独特な主張をしていた。もう師匠はあれを店で使っていない。だからその調理法をそのままパクッてやってもいいんだけど、そうすると僕個人の、蕎麦職人としての個性が失われる。あれは師匠の味でしかない。だから、僕はあの味を超えたいんだ。

 

 僕の強みってなんだろう。僕を蕎麦で表すとしたらなんだろう。さっきダシを取りながら考えていた。

 

 この街には色んな蕎麦屋があって、数年前からご当地グルメとして蕎麦を売り出す事になった。僕はそれに誘われて修業を始めた。だから他所とは被らない持ち味がいる。埋もれたくない。

 

 正直言うと、僕が今企んでいる事を世に出すのを恐れている自分がいる。だからまたダシを取って、その不安を氷解させたい。

 

 僕には蕎麦しかない。これ以外の道がない。

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