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ヒメアノ~ルは誰か?

映画の感想

お題「何回も見た映画」

 

juliajewelkali.hatenablog.com

 

 唯一の友達である岡田に騙された森田は、虐められながら岡田を見ていた。その時の目つきを、岡田は「人間とは思えない」と表現している。また、虐められっ子という境遇から森田が『ヒメアノ~ル』と思えるかもしれない。だが、もう少し考えてほしい。森田と岡田が居酒屋で会話する場面。「お前も俺も底辺だ」という趣旨の事を話していた。森田からすれば岡田も同じ人種である。さらに、安藤がユカを紹介する場面で岡田は「動物としてカテゴリーが違いすぎる!」と言っていた。

 森田は岡田を同類だと思い、岡田は安藤を同類だと思っている。3人とも、弱者としては同じ穴のムジナ。そして、その上にいる強者こそユカである。そう思わせる考察があった。

 

初めは「Hime・Noir」かと思っていた。 つまり、姫を中心とした暗黒世界なのかな、とか。

『ヒメアノ~ル』背中を刺す意味 - 映画@見取り八段

 

 『MORITA Go』のダブルミーニングがあるので、この説は捨てがたい。というよりも、よく考えればこの映画はユカを中心に話が動いている。ヒメとアノールの物語なのだ。

 

 まず、ユカの発言には信用出来ない所がいくつかある。無言電話とか郵便物を盗まれるとか。このような被害はユカの言葉からしか出ておらず、実際に森田がやっている所は映っていないし、森田が他の女を殺す時にその様な行為をしていない。無言電話とか本当にやっていたのだろうか?

 もしやっていたとすれば、不在の時にユカの自宅へ押しかけたりするだろうか?

 家電や携帯電話にかけて家にいるかどうか確かめる事も出来たと思う。それに、郵便物を盗む事は森田にとって何の意味がある?

 「好きになった人の事を沢山知りたい」とか恋愛漫画みたいな事を森田が想うだろうか。殺す事で性的興奮を発散する男だし、岡田に裏切られた時、人に絶望したはずだ。だから躊躇いもなく人を騙し、惨殺する事が出来る。そこに、相手の心を想って行動するなんて無い。

 思いだせば、森田をストーカーだと決めつけたのは安藤である。しかも、根拠なんて『毎日来ている』という事だけ。

 ただ、パチンコ屋と同じように習慣だっただけではないのか。「ジロジロ観ている」と言うけど、ただボーっとしているだけに見える。森田がストーカーだって言うのは妄想に過ぎないんじゃないかな。

 ユカがその妄想に乗っかったのは、ただ森田が目障りだっただけに思える。心地悪かったというか、ボーっとしている姿を「見られている」と被害妄想をしたかもしれないし。ちょっと根拠が足りないかもしれないけど、そう考えると辻褄が合う。

 

 「彼氏がいれば安藤やストーカーが諦めるかもしれない」という趣旨の事を言った時に、はじめて岡田の事が好きだと告白した。これも嘘の可能性がある。草食系男子が好きそうな女。岡田にピッタリ。完璧なまでに。こんな女現実にいるか?(笑)

 都合がよすぎる。安藤に殺すと脅されてるから付き合えないと伝えても、「バレなきゃ良い」と言って付き合う事になるが、愛する人に命の危険を負わせるか?

 また、岡田がユカに電話番号を渡す場面や「張り込みして守ります」という場面を見返すと、全然喜んでいないのがわかる。自分から助けを求めといておかしい。

 14歳の時が初体験で10人以上の経験がある女だし、演技は容易いと思う。しかも、元彼とはピンクローターを使うのに岡田が使おうと言った時は断っている。彼女にとって、童貞を卒業したばかりの男は『弱者』なんだ。そいつを森田追放の為に利用した。

 

 チェーンソーを購入する所まではいけた安藤だけど、実は付き合っていたと判った時に行動出来なかった辺りが『弱者』だな。

 

 森田に撃たれたが病院で一命を取り留めた時、ユカが「ごめんね、私のせいで」と言っている。この場面は安藤と岡田が友情を確かめる所だけで良かったのに、この一言はなんだ?

 そもそも、2人の友情すら薄っぺらいんだけどね。2回みれば判るだろうけど、岡田も森田みたいに躊躇いもなく嘘をついている。この薄情な男に友情や恋愛感情なんてあるのだろうか。彼が一緒に着いていればユカは強姦されずに済んだかもしれないのに、一人で帰らせている。あまつさえユカとの関係をバラさずにやっていけば良かったのに、岡田は付き合っている事を安藤にバラした。言わなくて良い場面という事から考えると、彼女との秘密より自己顕示欲や優越感が勝ったのだ。

 「私のせいで」「私が(ちゃんと岡田を利用出来なかった)せいで」なんだ。

 

 岡田を殺す根性のなかった安藤は、岡田よりかっこいい所をみせる為に森田に近寄った。

 安藤が2発も撃たれたのは「ストーカー被害に遭っているから守ってほしい」というユカの発言からきているが、信用ならない。というより、嘘だと断言できると思う。だって、「実害がないと警察は相手してくれない」と言ったけど、郵便物を盗まれたら被害届を出したらいい。

 考えてみれば、初対面の女でも後をつけて殺しに行く森田が、ユカにだけ長い時間をかける必要がない。ユカに恋をしたとかいう事もない。原作は初恋の人に似てるかららしいけど、映画は話が違う。

 

 思い返せば、岡田の殺害を決意するのはユカの喘ぎ声を聞いた時。それに興奮したから、はじめてユカへの殺意が現れたんじゃないかな。森田が性的興奮を満たすには人殺ししかない。ユカを殺す前に彼氏である岡田を殺す必要があった。邪魔だっただけで虐めの復讐ではない。これで「お前、居たっけ?」の意味が解る。

 いつもは嘘でも即答する森田。その発言だけ一拍くらい沈黙があったのは謎だったんだけど、思い出しているだけだと思う。人殺しになって吹っ切れてからは過去に執着しなくなった。だからこそ死刑になる覚悟も出来ていた。けど、パチンコ屋を出て不良2人にカツアゲされた時負けてしまっている事から考えると、いくら強がってもトラウマはあるんだろう。パチンコ屋で勝ったのに漫画喫茶じゃ小銭しか持ってないのは不良に盗られたって事だし。

 普段は嫌な過去を忘れていても、何かの拍子に突然思い出す。それが、悪夢や幻聴として描かれているんだと思う。

 

 ユカは襲いかかられたけど犯されるのは防いだ。それは、岡田のおかげ。でも、そうさせたのはユカが『彼氏にしてやっているから』だ。一目惚れという事になっているが、初対面の場面でそのような演出はない。付き合うとなってから彼女っぽい言動が続くけど。

 つまり、自分を守る為の演技なんだよな。そう思うと、他人を欺いても自分の身を守るのが弱肉強食の世界で『強者』であり、まんまと騙されている、岡田、安藤、森田、この3人が『ヒメアノ~ル』なのだ。

 

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 考察すると別の物語がみえてくるのは放送禁止みたいだな~。それにしても面白かった。監督はわざと視聴者の想像力に任せる所を作っていると思う。僕が思うに、森田が上京した理由とか。

 

 この物語は東京である必要はない。田舎のままでも同じ物語が書けるはず。でも「何か持たないと底辺から上がれない」という趣旨の発言をしていた辺り、東京に行って社会復帰をしようとしていたのかもしれない。虐められていた過去を知られている街では生きていけなかったんだろうな。けど、東京ですら人付き合いが上手くいかなかった。なぜなら、トラウマが邪魔をするから。無職になるしかなく、和草に金を要求するようになったのだろう。

 

 もう一つは、白い犬を轢き殺さなかった理由。他の映画評論サイトじゃここが納得出来ないって書いてるけど、森田本来の純粋さ、温厚さを描いているんだと思う。

 岡田に裏切られた時人とは思えない目をしていたのは、人へ絶望したからだと思う。和草は、森田が不登校になってから母親に暴力を振るうようになったと言っていたが、飼っている白い犬については言及がない。もし自暴自棄になって犬も虐殺していたとしたら、その事が街中に広がり、和草が森田のキチガイさを語る時に話してもおかしくない。それがないのは、きっと不登校になった時そばに居たのは犬だからだ。犬だけが、彼の癒しだった。人を愛する事は出来ないが、動物を好いていた。言い代えれば、犬と同程度に成り下がったのだ。

 多分、犬を死ぬまでちゃんと飼って、最後は庭に埋めてあげたんだろうな。森田って死体を埋める事に執着している様に思えるし。

 

 そういう生活に満足していたが、卒業式1週間前になって、もう虐めとは完全におさらばだと思ったかもしれない。しかし、悪い事をしていない自分がこんなに苦しんでいるのに、なぜ悪事を働いた河島が暢気に生きているのか。それが許せなくて、殺害を決意したんだと思う。

 

 上記のインタビューには、森田は自問自答を繰り返す人物だとかいてある。そんな彼にとって、人を許せるか否かは『ヒメアノ~ル』になるかならないかを決める問いだった。言わば、誰でも森田の如く成り得るのだろう。

 久美子だって、和草の言いなりになって会社の金を横領する『弱者』だったけど、和草が自首して幸せな家庭が壊れるくらいなら森田を殺そう、と動き出した。

 

 片思いする者、一目惚れする者、殺そうとする者。彼らを食べるのはたった一人の強者、ユカだ。

 思い出すのは、森田に強姦される場面。襲われる女性は恐怖で声を出せなかったり身動きを取れなかったりするんだろうけど、ユカは叫びながら何度も森田を振り払おうとした。殺人の場面を現実味のある仕上がりにしている事から、色々調べている映画だと思う。強姦の被害に遭う女性の心境だって解かるはずだ。でもあえてこうしたのは、『心の強さ』を表す為だと思う。強者であるユカは、いざとなれば森田にすら立ち向かう。

 

 最後に、一番謎なのはパチンコで勝った場面。隣のおじさんに笑いながら話しかけられると森田は笑い返していた。もしかしたら完全に人へ共感出来なくなった訳ではないのかも。だとすれば恋愛感情があったかもしれないし、もっと言えば誰かと付き合っていた。

 

 その彼女がユカだったとしたら。確か居酒屋の場面でユカの友達が店を開くのが夢だと話していた覚えがある。場所の目標が東京で、森田も付いてきたんじゃないかな。でも性格の危うさを察してストーカーだと嘘を言いふらし、森田や安藤を巻き込んで別れようとした。

 

 ローターのくだりを思い出すと、ユカよりも『強者』なのは元カレだ。そいつが、ユカを岡田に奪われたから殺そうとした。

 

 そう考えると、岡田との居酒屋で飲んでいた時、「持っていない」と言ったのは恋愛感情の事なのかも。自分の歪んだ愛じゃ上手くいかないと自覚している。

 

 森田が1人で河島を殺せばいい場面でわざわざ和草を呼んだのは、「一緒に殺そうって誓ったから」という間違った友情を持っていたから。犬を大切に出来る彼でも、健常者と上手く付き合えなかった。だから自暴自棄になってユカすら殺そうとした。

 

 ユカを強姦する場面、他の女の場合は縛ってるのにユカへはそうしていないもんな。彼なりに普通のセックスをしたつもりなのかも。

 

 人に絶望していなかったとしたら、ユカの元カレは森田だと考えられる。

 

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